海域環境を配慮したセメント固化処理土の水中施工方法について

関門港湾建設(株) 湯 怡新

 宮崎良彦

1.はじめに

 浚渫土の有効利用においてセメント混合後の処理土を海底に打設する場合が多い。水中打設を行う場合、気中部での打設とは状況が異なる。浚渫土の性状や打設方法次第では、セメント混合処理土が水中で材料分離を起こし所定の固化効果が得られないばかりではなく、周辺海域に汚濁を拡散してしまう可能性もある。筆者ら1-3)は各種スケールの水中打設実験を実施してきたが、本報告は実際海上工事にあたって材料分離を抑えるための施工上の工夫、工事事例における汚濁拡散の観測結果を紹介する。

2.固化処理土の水中施工方法

 図−1(a)にトレミー管による打設方法4)を示す。ベルトコンベアの運搬中に固化材を混合し固化処理土を海中に投入する。この工法は砂質土の土質改良に適したものであり、海中投入に伴った材料分離を防ぐために分散防止剤などの混和剤を配合し、トレミー管の周辺に汚濁防止カーテンを設置する対策が講じられている。図−1(b)に管中混合固化工法5)を示す。浚渫土の空気圧送途中に固化材を添加し、圧送管内で発生するプラグ流の混練効果により浚渫土と固化材の混合を達成する。この工法では処理土は高速で(v=510m/s)吐出するため、直ちに水中打設ができず減勢装置を通してから水中打設を行っている。この固化処理技術は経済的で、しかも急速施工に対応できるメリットがある。図−1(c)にプレミックス工法6)の水中打設方法を示す。セメント混合は専用の混合プラントにて行い、処理土の運搬および打設するために強力な圧送ポンプ(最大送泥圧が7MPa)を備えている。圧送ポンプの強制的な送泥圧力により、打設管筒先が打設土中に挿入した状態でも連続的な打設施工が可能であるという特徴がある。打設終了まで処理土と海水との接触がなく材料分離や汚濁の発生を最小限にとどめている。

テキスト ボックス:  
(a) 事前混合処理工法
 
(b) 管中混合固化工法
 
(c) プレミックス工法

図−1 セメント混合処理土の水中打設方法



3.プレミックス工法による水中施工事例

 プレミックス工法による施工事例として30件近く蓄積してきており、施工数量は1,578,000m³に上っている。このうち約2/3は海水中の打設施工となっている。図−2代表的な実施例3つを示すが、これらの事例において水中施工中に水質調査を実施しているので、これらの工事および水質調査の概要を紹介する。

 事例1は水産物関連施設の用地造成を目的に行われた埋立工事である。セメント混合処理土は表層固化盤として用いられた。周辺海域ではカキ等の養殖場がありセメントを用いた埋立造成による海水への影響に配慮が必要であった。対策として、予め固化処理土と矢板を用いた仮締切りによって埋立地周囲を囲み、工区外海水と処理土を常時遮断することで埋立施工を進めた。

 事例2では、セメント混合処理土を埋立護岸の土砂漏出防止工として利用した。従来、護岸背面の吸い出し防止には防砂シートを敷設する方法が一般的である。しかし、本工事では40mに及ぶ大水深であるため防砂シートの水中展張が困難であると判断し、プレミックス工法が採用された。工事中に水質調査を実施した。採水位置は打設点より150m離れた場所と、さらに打設点より700m1200m離れた場所で、各3水深とした。

 事例3では、セメント混合浚渫土を護岸腹付け工に用いた。施工断面の下部は水中打設であり、法肩部は気中打設であった。水中打設中に、打設管の左右と前方の各位置にて表層の水質調査を実施した。


  テキスト ボックス:  

 

 
図−2 プレミックス工法による水中施工事例の概要


4.実工事での観測値と自然海域での水質変動

 図−3に処理土の水中打設位置からの距離を軸に実例データをまとめた。事例2,3の結果をみると、処理土水中打設に伴った汚濁拡散は打設点付近の数メートルに限られていることが分かる。これより離れた水域では濁度は18ppmpH7.88.2という小さな範囲に収まっている。ただし、事例1では海水の濁度が比較的高い値となっているが、この海域の水深が浅く(0-2m)、降水後の河川水による影響が大きかった。また、図−3に筆者らが実施した水中打設での結果も併せて示している。実スケールの実験D3)は実施工と同じ結果を示したが、小型の水中打設実験1), 2)では採水位置と打設位置は数センチ〜1mの距離しかがなく、水質測定はかなり高い値となっている。従って、小規模の水中打設実験で得られた水質の結果を用いて実海域における水中施工の影響を解釈すべきではない。

 一方、常滑沖の自然海域で記録されたデータ7)をみると、pH8.09.1、濁度は18の間で変動している。図−3の実施工の結果はこれとほぼ一致していることから、プレミックス工法を用いた水中打設による海域への影響は、自然界の変動範囲にとどまっているといえる。ちなみに、海洋汚染に係る環境基準8)では、水産1級と2級水域のpHについて7.88.3に設定されている。また、濁度について明らかな規定はなく、水質汚濁防止法に基づく排出基準9)では浮遊物質量SS<200ppm(濁度<125ppm相当)と設定されているが、平常時海域の濁度が15ppm以下なら問題ないとされている。


テキスト ボックス:  
(a) 濁度の比較

 
(b) pHの比較
図−3 実施工と打設実験における水質測定


5.結 論

 セメント固化処理土の水中打設の施工方法を説明した。プレミックス工法による汚濁拡散は施工位置の数メートル範囲にとどまり、これ以外の海水域における濁度とpHの変化は自然界の変動範囲を超えないことが判明した。

【参考文献】

1)湯 怡新・中林 進・藤村浩幸・浜福健二・酒井敏明・柳原勝也:プレミックス処理土の水中打設特性,第33回地盤工学研究発表会,pp.2255-2256, 1998

2)岡本弘基・落合英俊・安福規之・大嶺 聖・湯 怡新:セメント固化処理土の水中打設に伴う材料分離とその対策,第35回地盤工学研究発表会,pp.1247-1248, 2000

3) 怡新・温井達雄:セメント処理した浚渫土の水中打設に汚濁拡散実験,第54回土木学会年次発表会,第V巻B, pp.556-557, 1999

4) 功企:液状化対策としての事前混合処理工法の開発,土と基礎,土質工学会,Vol.38,No.6, pp. 27-32, 1990 

5)安立重昭:管中混合固化工法の動向について,港湾技術研究所特別講演会「一日港研in名古屋」,pp.43-60, 1999

6)運輸省港湾局技術課:浚渫土のリサイクル技術に係る民間技術評価証,浚渫軟泥土のプレミックス工法, 1998

7)中部国際空港株式会社ホームページ, 11月更新, 2000

8)環境基本法, 法律第91, 1993

9)水質汚濁防止法, 法律第138, 1970